その日は、私は最寄り駅から自宅へと、今日の夕飯は何にしようか
と思案しつつ、暮れなずむ街の中を家路へと急いでおりました。

私の30mほど前には、スーパーのレジ袋を下げた女性が
歩いていました。服装から察するに、仕事帰りの30～40代の
ごく普通の女性のように見えます。

ただ、何か様子が変です。というのも、向かいから歩いてくる人が
彼女とすれ違った後に、振り返って彼女のことを見るのです。

ひとりであれば、気になることではありませんが、
すれ違う人がかなりの確率で彼女を二度見します。

その時の私のゲスな気持ちを白状すれば、
もしかして凄い美人さんなのかなと思いまして、
彼女の前に出てみようと思いました。

私はその時、イヤホンで大音量で音楽を聴いていたので、
まずはこれを外しました。その瞬間、彼女の前に出るまでも無く、
皆が振り返る理由が分かりました。

私の前を歩くその彼女は、もの凄い大きな声で、
渡辺美里さんのマイ・レボリューションを歌っていたからです。
サビの部分だけを繰り返し、歌はかなり上手いです。

普通に考えればなんか変わった人、になるのでしょうが、
その時の私はちょっと凹んだ気持ちだったこともあって、
なんだか妙にしっくりきてしまいました。帰り道、大声で
マイ・レボリューションを歌いたい日だってあるよね、と。

その女性とは自宅近くまで帰り道が一緒で、
彼女が歌うマイ・レボリューションをずっと聴きながら
家路へとつきました。

ところで、私にとってのマイ・レボリューションは酒です。
もう少し健康的なマイ・レボリューションを探したいです。